人生も同じです・・じゃない!

 なんというか、「人生も同じですね」というお話がある。
 特に理系よりの新書とか一般向け書籍によくあるような気がするけれど、他の分野でも沢山ある。
 どういうお話かと言えば、例えばミツバチの生態について書いていたのに、最後のところにきていきなり人間社会との類比みたいな話が出てきたり、ワオキツネザルの男女関係が人間の恋愛との対比になったり、みたいなお話のこと。
 いや、まだ生き物だったらなんとなくわかる、というかわかっちゃイケナイんだけど、まぁ多少なりともそういう話もあるか、と許したとして、核融合とかゴミのリサイクルとか、そんな話からいきなり男女のお付き合いみたいなお話が出てきたりする。
 いや、核融合はいいんよ。めっちゃエエ話してくれたんよ。そんな素晴らしい研究のできる人が、色恋みたいな話に飛んだ途端、ものすごい下世話でくだらねーコメントを残してくれるわけよ。
 「人生も同じです」・・じゃねーよ!
 全然、同じじゃないから。
 いや、人生は人生でいいよ。先生だって恋くらいするやろ。それはいい。
 でも、それはそれで個人的に勝手にやってくれたらいいんよ。内輪の居酒屋トークでやるのも、まぁいいですよ。
 そうでなければ、もう最初から人生の本として丸々一冊書いたらええんちゃうの。その本、多分全然おもしろくないと思うけど、出すのも買うのも勝手だから、文句は言わないよ。
 ただ、サイエンスのすごくイイ話から奥さんのご機嫌の取り方みたいのに無理やりつなげるのは勘弁して下さいよ。
 なんというか、クルクルパーなお話がいきなりサイエンスを名乗るニセ科学系のお話の逆バージョンみたいにすら見えてくる。
 もうね、何度も言うけど、人生は人生、先生の奥さんのご機嫌は奥さんのもので、核融合とは関係ないから。それともなに? 奥さん核融合で動いてるの? ガンダムなの?

 なんか一部の理系の先生の悪口みたいになったけど、別ジャンルでも全然あるから。
 単に理系のお話だと段差が激しくてより一層むりやり感が浮き立つ、ということだから。
 でも、段差が緩いところにはまた緩いがゆえの問題がある。
 個人的に馴染みのあるところだと、身体論系とか、ほんとヤバイ。ネタがネタなだけに、ひとつづきみたいなところがあるから、ほんと危うい。
 スピリチュアルまであと一歩、というか、まるっきりスピリチュアルに行っちゃってクルクルパーになってるものが沢山ある。
 なんでかというと、この辺は逆に理系の賢い人とか、自分でやってない人がわかってないことだけど、この辺のお話は感覚と主観が大事だから。
 なんでかっつーと、フィジカルなことなら客観的に記述できるような気がついしてしまうのだけれど、まず第一に身体の奥の方の細かいことを本当に正確に記述するのはものすごい大変でほぼ無理じゃね、というのもあるのだけれど、百歩譲って仮にそれができても、そんなもの別にやってる人間には役に立たないから。
 これまたなんでかっつーと、ホンマに動いてる時に「大腿四頭筋を収縮させて」とか考えて動かしてる人はいないから。そんな「客観的」なこと言われても実際の役には立たんわな。
 いや、ある程度は立つよ。すごくミクロというか、部分的で瑣末なところなら、分析的にとらえて変える、というのはある。でもそれは、「客観的」に記述された「それ」が、自分の「感じ」でいうと「どれ」なのか、という、明確な対応が把握できる範囲のお話で、それを越えるともう全然役に立たない。
 だからこういうアプローチは限定的にして、その一方で昔ながらというか、「わかってる者同士なら通じる」主観的なやり方をする方が、パッと身体全体でとらえられる。
 どっかの陸上選手が走る時の感覚について「空き缶を縦にグシャッとつぶしていく感じ」とか言ったみたいだけど、ほんとに空き缶つぶそうとしたら、それは上から下に垂直に踏むわけで、文字通りこんなことやってたら前に進めない。だからこの表現は全然客観的じゃなくて、その人の「感じ」を言ってるだけだ。でも、「やってる人」同士だと、こういう話の方がずっと役に立ったりする。「パッと入ってサッと打つ」とかいう系のお話。なに言ってんだかサッパリわかんねーけど、時々、こういうのがものすごい役に立つ。
 で、この手の「パッと入って」みたいのが割と外に出る時はいいんよ。目で見てわかるから。
 問題は目に見えないもので、そういうのが大概もっと大事なんだけど、それは身体の中の使い方で、見えないだけにより一層へんてこりんで意味不明な表現になる。
 で、これも厳密に「やってる人」同士が使ってる分には結構良いのだけれど、やってない人とかわかってない人が言葉尻だけ捉えると変な話になってくる。
 「中」の話だけに「内面」になって、それがココロとかになって、さらに宇宙につながったりする。スピリチュアルのできあがりや。
 なんやねん、宇宙って。
 しかも「わかってる」先生自身が、自分自身の身体の中のことが見えるわけじゃないから、まわりのわかってないヤツの勘違いに引きずられて、ほんまに宇宙かなんかだと思い始めたりすることがある。
 こういうわけわかんねーこと言ってる人は、詐欺師やインチキだけだと思うかもしれないけど、驚くことに、ちゃんと実力のある人も言っていたりする。そういう人は、本当に実力もあるんよ。でも自分で自分がなんで強いのかはよくわからない。それは普通。そこまでは普通なんだけど、無理に説明しようとして宇宙に行ってしまう。
 それと、実力はあるんだけどその源がわかってなくて、何かで調子が悪くなった時に戻し方がわからなくて、そのまま宇宙、ってコースもある。
 宇宙に行ったらアカン。あんたスペースシャトルか。
 宇宙の話はNASAにでもやってもらったらいいんよ。あんた幅跳びの選手やろ。なんぼジャンプしても第一宇宙速度とか無理やから。

 なんか話がズレた。ズレた話するなみたいな話しててズレた。
 とにかく核融合は人生じゃないし、幅跳びも宇宙じゃない。
 ああでもなんか、話ズレながらこういう話してたら、それはそれで面白いんじゃないかって気もしてきたよ。
 なんかこう、遠くから眺めてケラケラ言ってる分には楽しいかもね。あかんかな。あかんやろな。
 まぁ、話ズラしたくなる気持ちはわかるよ。ウチもよくズレてるから。まぁでも、なるべく面白くズレた方がいいんじゃないかな。あと宇宙はいらんわ。