相手の話をしたらダメ

 基本的に話をするのは大好きです。
 非常に尖った面倒臭い人間ではありますし、日頃一人の時間が異様に長いものの、根は寂しがりだと思いますので。
 一方、ある種の男性(だけではないですが)には本当に近づきたくないなぁ、と願っています。絶対関わりたくない。
 って、「ある種」なんて言ったら当たり前じゃないか、という話ですが、この人たちというのは必ずしも悪い人とか、つまんない人とか、異常な思想の持ち主とか、極端に失礼な人でもないのです。体臭がキツイとかそういう話でも全然ありません。
 何が分水嶺になっているのか、考える訳です。
 当たり前ですが、悪意があったり露骨に失礼だったら嫌ですよ? でもそれは当たり前の話で、別段ここで言いたいことではありません。
 ここで「話したくないなぁ」という相手は、その人自身は魅力的だったり、話が面白かったり、作品や文章は素晴らしかったりするのです。
 ですから、例えばテレビなんかで話しているのを一方的に聞くとか、そういうのは全く問題ない、むしろ聞きたい、とかだったりするのですね。
 別に「視界に入れたくない」のではないのです。
 単に「視界に入りたくない」のです。向こうの視界にこっちが映りたくない。
 これはどういうことかな、と思うと、こちらについて言及されたくない、ということなんでしょうね。
 いや、別段一切言及するな、というのでもないし、一定の信頼関係というか、ある程度仲良くなっていれば普通のことだと思いますよ?
 でも一度でも地雷を踏まれると、もう永遠にアウトですね。何も言っていなくても視界に映っているだけで不快。

 で、誰しも最初は何が問題かなんてわからないわけで、わからないうちに相手に言及する時点で社交術として程度が低い訳です。
 「脇の下で話せ」って言うでしょ。対面じゃなくて横に並んで同じ方向を見る。
 同じ方向のその向こうには何があるかというと、大したものはないですね。テレビだったり第三者だったり神様だったり(って大したことあるかな)。
 要するに「第三項について共に話せ」ということでしょう。
 何なら、第三項をただ一緒に見つめる、でもいいです。
 対面の相手のことを話しちゃだめですよ。
 よくいるでしょ、大して話してもいないのに「仕事なにしてんの」「歳いくつ」みたいの。
 まぁさすがに年齢はアウト案件として周知されてるからいきなり踏んでくるアホはそうそういませんが、相手の属性みたいの探りに行く、という人は結構います。
 あのねぇ、まだ全然、そういう段階じゃないの。
 というか、聞かないとわかんないようなら、もうその時点で自分のコミュ力を疑おうよ。
 知ろうとなさんのよ。
 知れてくるのを待てばいいのよ。

 「相手への関心を示す」みたいな意味で、色々聞いた方がいいと思っている人もいるかもしれないけれど、そういうのはいかにも聞いて欲しそうなオーラ出してる時だけでしょ(そういうオーラはオーラで「面倒臭い」というのはよくわかりますが)。
 「関心を示す」ってそういうことじゃないのよ。
 同じ方向を見られればいいんだから。
 逆に、自分の話ばっかりするのはアウト、みたいのもあるでしょうし、まぁ自慢話とかは鬱陶しいかもしれませんが、相手を掘るよりはまだマシじゃないですか。
 自分でも相手でもないものから始めなければ、話なんかできないでしょ。
 で、最初で間違えたら永遠にアウトでしょうね。
 まぁわたしも出しゃばって失敗したことは何度もありますので、第三項で入りつつ相手が語りだしてくれるように工夫はしています。
 この時、あんまりツッコミを入れちゃだめですね。
 ツッコミを「関心」だと思ってしまう人がいますし、「理解していることを示す」ために咀嚼して返す方が良いという人もいますし、わたしもそういうところがあるんですけど、やっぱりダメですね。
 もう、ほんのちょっとでいいんです。
 基本、相槌とオウム返しだけで良いと思います。
 それで、本当にたまーに、「こいつ聞いてねえだろ」と思われないために、咀嚼して言い換えとか軽いツッコミとか、その程度じゃないですか。
 この点はもう、自戒を込めて言ってますけどね。ついツッコんじゃう方なので。ボケてる割に。
 ただただアホみたいに肯定してれば良いんじゃないですか。
 
 まぁわたし自身、相手にすごくすごく関心があると、つい対面で賞賛しすぎたりしちゃうことがあるので、気をつけます。
 善意なら良いってわけじゃ全然ないですからね。
 意図なんか関係ないんだから。
 と言っても、こういうのは肝心な人には届かないのですが、ただの愚痴ですので聞き流してやって下さいませ。