ただ踊ってただ殴ればいい

 道でなんかやってる人はだいたい好きだし皆んな尊敬している。
 ここで歌いなさいとかここで踊りなさいとか、まぁ別にイカンとは言わないけど、はぁ~しらけるわ~とグッとテンション下がるし所詮奴隷の芸術に過ぎない。
 挙句の果てにヘブンアーティストね。大道芸人が都知事閣下の許可を得るという。ギャグが高度すぎるやろ。
 ヘブンとは良く言ったものだと思う。確かにここがヘブン。完成されたディストピア。ゲーテッドシティ。歩きタバコは死刑ですよ。はいはいヘブンヘブン。良かったねー。
 こないだは某所で久々にヘブンじゃないアーティストに会った。大体ここはヘブンなのね。めっちゃ人が多いからすぐ通報されるんだと思う。練習の延長みたいなノリでやってたのかな、と思う。和太鼓の人。
 宣伝になるかわかんないけどMasaya Hoshizakiさん(@msy_1120) • Instagram写真と動画ともうひとりの二人組だった。
 道でやってるアーティストが気にいると大体踊る。というか気がつくと踊っているのでそういう風に体ができている。
 その道の人から見てうまいかどうかはよくわからない。わたしは楽器は全然ダメだし歌も歌えないから。歌どころか気管支もおかしいし普通の声もあんまり出ない。ただ身体の尺度みたいのがあって、それがあえば身体は自動的に動く。
 和太鼓自体は特に興味もなかったけれど、この人たちはなんかバイブレーションが合ったのだと思う。あと天気とか体調とか、そいういうのの全体。全体の中で動けなければ意味なんかないと思う。
 うちの師匠に「夏暑いとか冬寒いとか雨だとか風だとか、そういうのの中で稽古するのが大事なんだ」と言われたけれど、その通りだと思う。そういえば昔格闘技を始めた頃に通ってた道場の先生も「夏暑い冬寒いと言ってたらいつ稽古すんだ」と言ってたけど、あれはただの気合的なことだったのかな。まぁあの道場は今思うとパッとしなかったけれど言ってることは正しかった。
 わたしの身体操作はすべて武術から来ている。もうあんまり殴ったり蹴ったりは興味がないけど、やるならやりますよ?という圧力みたいのは大事だと思っている。それ以外は身体がつながって動くことがすべて。
 これはもう、明白にわかる。あんまり身体的なのでなぜ人に伝わらないのか不思議だけど、空中に見えないレールがあるみたいに明白で、見えないけど触ることはできる。その間を通っていけばそれがダンスだし武術だと思う。ひゅんひゅん無限に動ける。
 まぁこのモードに常時入れるわけじゃなくて、ムラっけが多いのがわたしの問題なのだけど。
 道で踊りたいし踊ってしまう音や環境に出会いたい。偶然まかせだけど呼ばれれば大体行くので呼んで欲しい。

 道で歌っても太鼓叩いても踊っても寝ても良いに決まってるし、気に食わないならその場で殴り合えばいい。それもまたアートだ。
 まぁそれ言ったら警察が来るのもアートだし、それをやってるのがトラリーの小灘さんとも言える。あれは路上解放運動とかそんな安いものではない。
 議論なんかしたら終わりなんだから。土俵に乗った時点でもう負けなんだから、相手にしたらいけない。ただ踊ってただ殴ればいい。
 それはとてもとても自然なことだ。触ればわかる。明白にわかる。