裏サンデーに連載されている岡部閏さんの『世界鬼』。
連載開始当初に少し読んでいて、正直、その時は「合わない」と感じていました。よくあるデスゲーム系の設定にメルヘンサイコなネタを盛り込んだ感じで、絵柄も好みではないかなぁ、と思っていました。
しかし、しばらく経って最新話をちらっと読むと面白く、結局、全巻ゲットして読んでしまいました。
取っ付きにくい要素はあるかと思いますが、これ、面白いですよ。
ぜんぜん違うかもしれませんが、個人的には伊藤潤二さんを思い出しました。ホラーなんだかギャグなんだか分からないというか、狙ってやっているような天然のような微妙な感じ。
グロいサイキックな要素は色々あるのですが、多分岡部さん自身はかなり計算していて、恐怖と笑いのギリギリの線を作り出しているのではないかと思います。それとも、ナチュラルにこの感じなのでしょうか。それはそれで天才的だと思いますが。
まぁ「俺はセキセイインコだ!」とかは流石に狙ってると思いますが・・。
とにかくこの「文鳥ちゃん」が素晴らしいです。さらっと読むと普通に気持ち悪いのですが、こんな大活躍をするようになるとは・・。鳥好きとしても応援したいです。いくらなんでもペットショップの店員が文鳥とセキセイインコを間違える訳がない、というツッコミはおいておきます。文鳥ちゃんカッコイイ! 男前!
それから、足立のヒロインっぷりもイイですね。足立は本当にイイ奴。
あの自衛隊のシャブ中の人とかは、もう少しリアルな設定にしても良かったと思いますが・・まぁその辺は岡部ワールドなのでしょう。
惜しむらくは、最初のわたしのようにパッと見の印象で引いてしまう人が結構いらっしゃるであろうこと。その辺は岡部さんも了解済みで、遠慮せずに突っ走るからコアなファンには面白いのでしょうが、もったいない面もあります。
気持ち悪さとそれが笑いに転じる表裏一体な感じを絶妙に掴んでおられる作家さんだと思うのですけれどね。
ただの妄想ですが、『世界鬼』が終わって次の作品になると、毒気が抜けて更に完成度の高い作品が出てくる気がします。毒が抜けてそのままつまらなくなってしまう人もいますけれど、ちゃんと地力のある人なのではないでしょうか。変わっているようで、少年マンガ的なお約束を押さえているところもありますし。
メルヘンサイコな要素がなくても、この人は十分「気持ち悪面白い」感じを表現できるのではないでしょうか。
世界鬼 1 (裏少年サンデーコミックス) 岡部 閏 小学館 2012-12-18 |