吉鷹弘の打撃革命 (「GONG格闘技」実践DVDブックス vol.1) 吉鷹 弘 イースト・プレス 2011-07-12 |
突然格闘技本です。
初めにお断りしておけば、わたしは多少なりとも武道・格闘技をかじっていた人間ですが、今現在は道場に所属し練習している訳でもなく、はじめから別に強くもない、ただの武道オタクです。ですから、全然見当違いなことを言っているかもしれませんが、悪しからず。
で、この『吉鷹弘の打撃革命』も、練習者というよりは単に武道オタク的興味で買ってみたのですが、予想以上に面白かったです。
キックやボクシングで常識とされているような方法に対し、「こちらの方が(MMAなどのルール制約の緩い環境では)良い」というスタイルを示されているのですが、興味深いことに、その多くがむしろ伝統武術寄りです。
例えば、逆突き(リアハンドブロー)は、一般に後ろ足を返して寄せ足して打つと言われていますが、足は回さない、寄せ足しない打ち方を推奨しています。この打ち方は、キックやボクシングに比べると伝統系に近く(それとも違いますが)、回転よりは膝落や重心を落とすことを重視したスタイルになっています。この方が肩を回すことでフォロースルーが伸び、蹴りやタックルにも繋ぎやすいとのことです。後ろ足を返す打ち方に慣れていると、最初この方法は体重が乗らないような感じがしますが、身体を落とす感じで打つと、地面を蹴って後ろ足の内側を登ってくる力がパンチに伝わるのが分かるはずです(ただし伝統系では普通、吉鷹式ほど肩を回して前傾気味になる打ち方はやっていないと思う)。
また、前蹴りは上体を反らしたり軸足を返したりせず、身体を沈めることで蹴る、というのも、まるで中国武術です。肘についても沈身の重要性を説明されています。
伝統系とはちょっと違いますが、ワンツーで縦拳と横拳を混ぜる、というのは、JKDなどで行われることがあります。
こうしたことがなぜ起こるのか、と考えると、誰でも思いつくことですが、従来の打撃がキックやボクシング、またはフルコン空手などのルール制約の多い競技の中で発達してきたものだからでしょう。総合とキック、ボクシング、フルコンでは間合いが全然違いますし、打撃が変わるのも当然かと思います。逆に言えば、近い間合いではキックやフルコンの技術が生きることもあるでしょう(ただ、その間合いでも掴みがあれば同じようにはできないと思いますが・・)。
武道オタク的には結構うれしい内容で、実際の格闘技練習者はもちろん、単なる武道オタクにとっても非常に楽しめる内容でした。