王政・壁教、巨人化の原因、座標、ユミルの民

 ライナー・ベルトルトら「戦士」の目的、「座標」の意味 『進撃の巨人』の続きで、更に痛い予想・考察を続けます(12巻時点での妄想、アニメ派にはネタバレを含むので注意)。

 仮に前の予想が正しく、巨人救済が「戦士」らの目的だとすると、王政や壁教との関係はどうなるのでしょうか。
 巨人にされたままの人間からすれば、壁内人類はそれだけで「自分たちを放って逃げた」人々なのですが、それだけでは弱いので、壁内中枢にいる人達、壁の秘密を知り言論統制している人たちというのは、そもそもの巨人化に関与しているのではないでしょうか。
 前のエントリで、巨人化の最初のキッカケとして
①伝染病など、何らかの外的原因
②人間兵器など、人為的な原因およびその暴走
③巨人化自体により、実は何かから身を守っている(巨人になったお陰で助かっている)
 の可能性を考えました。
 「巨人化に関与」とは、②の可能性のことです。例えば現在の壁内中枢にいる権力者たちは、人間兵器を作り出した人々の末裔、というのが考えられます。この場合、人間を巨人兵器にして使おうと思ったら制御できなくなり、巨人化した人々をおいて逃げた、という訳で、「戦士」側からは憎まれて当然です。
 それでは露骨に自分たちが悪者で秩序を保てないので、壁内は言論統制して、巨人を悪者にしたてあげている、とも考えられます。
 巨人を作り出した人々は、巨人化技術やテクノロジーに対して恐れを抱いており、技術を封印しています。またこれは、大衆が余計なことを知らないようにするためにも有効です。
 これが一番確率が高いと思うのですが、そうだとすると、仮に「グリシャが巨人の種を蒔いていた」場合、グリシャがただの極悪人か狂人になってしまいます。それはないと思うので、その場合③か、「グリシャが蒔いていた」説はNGになるかと思います。
 もし③だとすると、全人類が完全に巨人化せず、一部が壁内に残っている理由が必要です。ナウシカ的世界観なら、「地球を守るため」とかもあるでしょうが、巨人でそれはないでしょう。ちょっと苦しいです。

 「座標」について。
 前回、「座標」が「巨人を人間に戻す(知性巨人化する)」ことに関与しているのでは、という予想を書きましたが、もう一つ気になることがあります。
 12巻末尾でエレンが「座標」能力らしきものを発揮した際、ライナーがこう言っているのです。
「最悪だ、よりによって『座標』が最悪の奴の手に渡っちまった。絶対に取り返さねぇと。間違いねぇ、断言できる、この世で一番それを持っちゃいけねぇのは、エレン、お前だ」
 エレンが「最悪」であるのは、彼が巨人を憎悪しており、巨人救済の道が絶たれるからだろう、と考えましたが、もう一つ気になるのは「渡っちまった」「取り返さねえと」です。
 つまり「座標」は「渡った」けれど「取り返せる」ものだということです。
 「座標」というのはある種の能力のようなものだと思っていたのですが、「取り返せる」ということは、後からそれを剥奪できる、ということです。覚醒や獲得した能力だとすれば、ちょっと不自然です。
 すると「座標」というのは、何かの「資格」とか、「役割」「権利」のようなものなのではないでしょうか。トランプゲームの「親」のようなものです。
 「座標」能力は巨人化能力とともにグリシャの注射により埋め込まれたと思っていたのですが、それが「資格」「権利」のようなものなら、12巻での発揮時点で獲得されたもののようです。
 ちょっと確率は低いと思うのですが、12巻末尾でエレンが巨人に対して素手パンチしているのが、何か関係があるのでしょうか。人間または知性巨人の人間状態の者が素手で巨人に触れる(触れてかつ生き残る)という場面は数少ないと思うのですが、何かあるのかもしれません。
 
 ユミルについて。
 個人的にユミルは一番好きなキャラで、塔で初変身して戦うところは胸が熱くなったのですが、それはともかく、ユミルにも色々謎があります。
 ユミルがかなり昔に巨人化し、その後マルセルを食べて人間に戻った(知性巨人化)したのは確定でしょうが(マルセルはライナーらと同じくスパイとして送り込まれた知性巨人だったのでしょう)、塔で変身した時に言っていたセリフが気になります。
 「クリスタ、わたしもだ。自分なんて生まれてこなければ良かったと思ってた。ただ存在するだけで世界に憎まれたんだ。わたしは、大勢の人の幸せのために死んであげた」
 「死んであげた」といっても実際には生きているので、社会的に死んだ、巨人になった、ということかと思います。
 例えば、巨人化が何らかの伝染性を持っていた場合、巨人因子に「感染」したユミルが、他の人に伝染さないために自らを隔離し、そのまま一人巨人になった、といったことが考えられます。巨人が「人間兵器」であるにせよ、何かウィルスのようなものを注射しているのかもしれず、伝染性がある、という可能性はあります。
 しかしそれだけでは、「存在するだけで世界に憎まれる」というのは強すぎるように見えます。生まれた時から巨人化が確定しているかのようです。
 「壁内がもうすぐ地獄になる」という話とも関わりますが、やはり巨人化には遅効性の要素があり、因子を持っていると長い時間を経て巨人化する、場合によっては生まれながらにして巨人化因子を引き継いでしまうのではないでしょうか。調査兵団が続々と巨人化してはいないので、簡単に伝染るものではないのでしょうが、「人に伝わる可能性があり、長い潜伏期間を経て発現する」性質かと思います。
 ただ、だとすると、ユミルがその幸せのために死んであげたという「大勢の人」はどこに行ったんだ、という疑問はあります。ユミルが自らを隔離することで一度は巨人化を回避した人々も、そのうち巨人になってしまったのでしょうか。あるいは、「戦士」の故郷と関係があるのでしょうか。壁内人類とは別の人達のように思うのですが。

 ユミルといえばイルゼの手記、「ユミルの民」です。
 「ユミルの民」については、イルゼがそばかすだからユミルと間違えた、といった解釈もあるようですが、いくらなんでもそれはない・・と信じたいです。そばかすだけでユミル認定じゃ酷すぎます。
 「ユミルの民」というのは、人間のことではないでしょうか。
 壁外の巨人は人間を見れば食べようとしますが、皆が皆人間を見たことがあるわけではないでしょう。長い長い間、人間との接触もないまま彷徨い続けている巨人もいるかと思います。イルゼイーターにとっては、普通の人間が生き残っていたこと自体が驚きだったのではないでしょうか。
 イルゼイーターらは、おそらく最初にユミルを追い出した人々らで、彼らはユミルら「原始巨人」を見殺しにした(英霊化した)ことに罪責感を抱いており、神格化しているのではないか、と想像します。
 おそらく、この人々がユミルら「原始巨人」を追放した時点では、ユミルらはまだ人間の形をしていたのでしょう。そのため、自分たちが追い出した人々がまだ人間の姿を保ったまま見つけられた(むしろ自分たちの方が巨人になってしまった、報いを受けた)、という心理なのではないでしょうか。

 以上、またとりとめもなく書きましたが、当然ながら全部妄想です。どうなることでしょう。

4063950441進撃の巨人(13) (講談社コミックス)
諫山 創
講談社 2014-04-09