個人的に最近とても気に入っているマンガがあります。『ワンパンマン』のONE先生による『モブサイコ100』です。
原作ワンパンマンの時から好きで読んでいたのですが、あれよあれよという間に随分メジャーになってしまいました。
世間的には『ワンパンマン』の方が知られているでしょうし、それもいわゆる「村パン」、リメイク版の方でしょうが、個人的には原作『ワンパンマン』と『モブサイコ100』の方が好きです。ONEさんのストーリーだけでなく、絵柄や演出が好きなのです。
リメイク版「村パン」と原作ワンパンマンを比べてみると、はっきり言って画力では比較にならないような差があります。にも関わらず、原作『ワンパンマン』には非常に引き込まれるものがあるし、単に話が面白いだけでなく、見せ方が素晴らしいのが分かります。
また、犬や瓦礫を描かせると結構上手いのに、女の子がちっとも可愛くないのがイイです。最近のマンガ(特に少年マンガ系)はやたら可愛らしい女の子のキャラばかりが目につくのですが、硬派で昔ながらの少年漫画が読みたいのです。
そして『モブサイコ100』。既にネームバリューのあるワンパンマンとは別に始めた連載ですから、ONE先生が今現在やりたいことをやっているのだと思います。
設定自体は別に新奇なことはなく、むしろ陳腐なくらいのところもあるのですが、これが非常に読ませます。
何よりもキャラが良いです。『ワンパンマン』もそうですが、ONE先生のマンガは脇役キャラがとても立っています。『モブサイコ100』で言えば、肉体改造部なんて、当初は話の流れで出しただけの存在だったと思うのですが、ムサシ部長がかっこよすぎてシビレます。
そして何より霊幻師匠。師匠が素晴らしい。
この師匠、最初はタダのインチキ霊能力者キャラだったのですが、インチキながら、結果としては相談に訪れた人たちを満足させて帰していますし、超能力よりも何よりも大切なことをモブに教えてくれています。
大切なのは、秀でた能力があるかどうかではありません。人間誰しも、程度の差はあれ、なにがしと能力らしきことはあります。それがずば抜けた人もいれば、平々凡々たる人もいるでしょう。しかし大事なのは、結果として周りの人たちに対しプラスを与えられる、ということです。どんなに優れた能力を持っていても、それが周りの人の為にならなかったり、害を及ぼすようでは、社会に受けいられる訳がありません。逆に能力としては平凡、あるいは劣っていても、世のため人のために動ける人間、愛される振る舞いが出来る人間には、居場所があるのです。
エンジニアの世界などでは、技術のある人々を「文系」が搾取しているかのような言説が見られることがありますが、技術そのものが直接お金になるわけではありません。お金にならないということは、人に受けいられていない、ということです。それを売る人間がいて初めて世の中と繋がれます。
逆に、何一つものを作っていなくても、「営業」だけで商売というのは出来ます。商業というのは、モノをあっちからこっちへ動かして利益を出すものです。余っているところから足りていないところに動かすだけでも、社会にとっては必要なものになります。モノや能力そのものが大事なわけではありません。
霊幻師匠が教えてくれるのは、そういう社会の基本的な仕組みです。
超能力組織「爪」の話が始まった時は、中二病っぽい設定にちょっと不安を覚えたのですが、全部計算づくでした。
能力そのものに溺れ、奢る「爪」の人々に対し、師匠はことの本質を看破します。
この霊幻師匠大活躍の下りが収録される予定なのが、『モブサイコ100』の6巻です。多分、もう少しで出版されると思います。
正直、この霊幻師匠の活躍を見るまでは、webで連載を読んでいただけだったのですが、あまりの師匠のかっこよさに、既刊全巻買ってしまいました。
周りの人にも薦めたいのですが、とにかく一番良い(良くなる予定)のが6巻なので、早く出てくれないか楽しみで仕方ありません。
モブサイコ100 1 (裏少年サンデーコミックス) ONE 小学館 2012-11-16 |