「イメージ通りにいかなかった時にそこでやめるな、多少強引にやることで身体が思わぬものを出すことがある」と師匠に言われた。
こういうのは言葉にしてしまうと実に安っぽく、色々な分野に使える汎用的で抽象的な教えみたいになってしまう。そして、その手の「ありがたいお言葉」を収集する連中、電車の中で「心に響く二百の名言」みたいのを読んじゃうヤツらは、ただ一般的なことを言っているだけなので何一つ具体的なことは成し遂げられない。自戒を込めて言っておく。
だからこういう、わたしがハッとしたことを言葉で書いてしまうことは結構気が引けるというか、言ってる先から嘘になる感というのがあるのだけれど、武術プロパーに関してはやはり、そうか!そうだよな~!と感心するところがあった。
まぁこの発言が出た具体的な文脈があって、その稽古法の中で、動きながら「ここで引き込める、ここで打ち込める、ここで飛ばせる」というのを意識するようには日々言われていて、なおかつ時々実際に転がしたりふっ飛ばしたりするわけだけれど、初期状態は双方拮抗しているのだから(それができるまででも大変な稽古が要るのだけど)、バッとしかけてトントン拍子でうまいこと転がせるかというと、そうはいかない。
特にわたしの場合、自分より軽い人とやることがまずないので、ちょっとやそっとでは崩せない。相手を動かせないならその力で自分が動く、というのもあるのだけど、それをやってもそうそう間に合うものではない。
だからつい、そこでやめてしまう。あるいは、やる前に諦めてしまう。
これはイカン、と思った。
師匠も言う通り「強引にやれば良いというわけではないのだけど」、時には多少無理くり押してみると、身体は頭より賢いものなので、意外なものを出してくれることがある(出ないこともある)。
そこで初めて、自分のレベルというものが上がる。
「こんな力がわたしにあったのか!」という驚きがないと、なかなかレベルは上がらない。
言った先からアカン一般化をすれば、わたしのやっている別ジャンルのことでも全く同じことが言える、と感心してしまった。まぁそのジャンルはジャンルで、それなりに血を流し汗を流しているから、それくらいは言っても許してもらえるだろう。
もう無理、もう全然出てこない、進めない、と本当にしょっちゅう思っているのだけど、そんなことはない。必ずできる。
ずーっとずーっとギリギリ考えて、夢に出るくらいにまで考えると、必ず出てくる。出なかったことがない。
そこで初めてレベルが上がる。