かなり具体的でかつ一般的なお話なので、(珍しく)何かしらやってる人には割と通じるかと思いますが、歩法には引き込む感覚がないと困る訳です。この世界では言い尽くされていることですが、蹴って歩いているようでは話になりません。
 要は中心にまとめていく感覚が途切れないということですが、難しいのは足を前に着いた瞬間ですよね。無造作に足を出していると、この瞬間に引き込めなくて「あれ?」となる。
 これ、後ろ向きに歩いてみると違いがよくわかります。
 下がるのは簡単、というのは、単に圧力に負けてズルズル下がるのは簡単、というだけでなく、後ろ向きなら着いた瞬間にはもう体重が乗せられる状態でしょう。一般の人でも自然にそうなります。大体は「乗せちゃう」状態で、それはそれでちょっと困るのですが(乗せられるけど乗せていない、これから乗せる、という操作が可能であるべき)、乗せる事自体は誰でもできます。
 前に進む時はこれが普通にはできない。特にわたしたちは靴を履いて暮らすのに慣れていますからね。ぽーんと無造作に足を投げて、踵がついて、よっこいしょ、と前に移る動作を当たり前だと思っています。
 着いた瞬間に引き込めない、踏めないということは、股関節が嵌っていなし、足の出し方からしてもう間違えてる訳です。両足が揃ってそこから前足が前に出る、この時の出方の時点で間違えているのです。
 そういう風に遡って「どこで間違えたのか」探していると、歩くという動作が円環的になって、始まりも終わりもない感じが出てきますよね。
 師匠には「区切りをつけるな」「極めるな」「リズムを取るな」と言われますが、稽古の過程ではある程度区切ることも必要だと思います。区切ろうとする内に区切れなくなる。自然に区切れがなくなる。そういうのが理想的だと思っています。

よしこ画伯

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