またどうでもいい与太話なんですけどね。
 なんというんですかね、これ人類の99.99%にはまったく通じない話かとは思うのですが、こう、張りと重みのできた腕と腕が接触して、その接点の自動反応として釣り合いができるのだけど(ここまではできてる前提)、それと同時にこっちの中心で相手の中心を捉えるみたいな感覚があって、そういうのは首の後ろか背中あたりに意識があって初めてできるんですけど、この力みたいのが斜面を滑り込むみたいな感じで相手に打ち込まれたりするんですね。
 相手が打ってきてるんだけど、何もしないでも勝手にこっちの手が相手の顔面打ってる感じ。「あ、ごめん」みたいになる。
 これが非常に上手い、めちゃくちゃハイレベルな先輩がいらっしゃいまして、最も尊敬する先輩の一人な訳ですが、もうこの技術で何万回も制されているわけです。
 こっちがバタバタしてなんか仕掛ければ仕掛けるほど、自分で沼にハマっていく。
 それがですね、最近になりまして初めて、こっちが先輩にこれを極められたんですね。「あ、あっ」と思ったらこっちの手の方が入って向こうの手が逸らされている。
 まぁまぐれみたいなものですが、嬉しかったので自慢です。

 意識し易い末端は自動反応になり、意識しにくい腰背に意識を置く。と、言うのは簡単だけど非常に難しい。
 一人でやるのは簡単ですよ。二三年も真面目にやってれば誰でもできると思う。もっと早いかもしれない。
 でもねぇ、人を前にするとそう容易ではない。特にわたしは気が短くてすぐ「こんちくしょう」とか思っちゃう質なので、ぼーっとしてるとすぐ前や末端に意識がいく。
 そこ行ったらね、総大将が前線の塹壕で戦ってるみたいなものですから、ポーンと大砲か何か飛んできてあっという間に白旗ですよ。
 駄目だなぁ。

 まったくついでの話として、この先輩は身体が小さいんですよ。厚みこそゴリラみたいですが、身長はわたしより低い。で、某フルコン系の指導者。
 当然めちゃくちゃ強いのですが、まぁあのリーチであそこまで行くのには大変な苦労があったと思います。
 しかも謙虚で寡黙。かっこいい!
 ふと思い出したのですが、昔々に今の団体に入りたての頃、細かい技術なんかじゃどうせ勝てないし若い時に足技ばっかやってたのもあって、この先輩との組手でほんと無造作にローとか出したんですよね。今考えるとほんとアホです。フルコンの指導者ですよ? それに無造作に様子見ロー。アホかと。お前は頭湧いてんのかと。
 もうこの瞬間に一瞬で入られて、あっと思ったらぺしゃんこにされましたね。
 今となっては良い思い出…ですが今やっても勝てる気がしない。
 あの頃は雑でどうしようもなかったですが、今だって先輩から見たら「何やってんの?」というくらい雑なんでしょうねぇ。恥ずかしい。

 歩法で中心にまとめる力がない、だからバタバタする、もっと丁寧に、みたいなことを師匠から注意される。相手の攻めに対し受けられてはいるけど、瞬間に身体のまとまりが崩れている、と。確かにその通りだと思う。ほんと最近師匠優しい。むしろ不安になる。
 この辺ねぇ、何度も注意されてるのですが、多分、わたしはわかってない。わかってないけど、とりあず「ウス」とか言って頷くし質問とかしない。質問すると機嫌悪くなるし。
 質問なんかしてるようじゃ三流どころか五流ですよ。
 黙って聞いて「ハイ」だけ言ってればいいの。どうせわかんないんだから。
 わかんないけど、そこに何かある、という信じる気持ちが大切。そういうの、本当に大切。
 わかろうと思うとね、結局自分のレベルに引きつけて考えるんですよ。そうするといつまで経ってもレベルが上がらない。まず「わかってない」ということを認める。アホなんだから。わかってないの。弱いんだから。弱い奴なんか発言も質問もする権利ないの。「ハイ」だけ言ってればいいの。
 それで覚えておく。
 いつか必ずわかる日が来ると信じてるし、師匠がテキトー言っていないと信じている。根拠はないけど、そういうのは決め事だから、一度決めたら守る。それだけ。自分で決めたのだから守る。
 そういうのが大事だし、実際「ああああっ!」とある日突然気付いたりする。
 信じてればいいの!

よしこ画伯

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