たまに少し良いこと(多分来週には終了)

 お正月は遊び呆けていて、それはまぁ、お正月だから良いのですけれど、ここ二ヶ月程精神的に不安定だったのが更に追い打ちをかけるように色々あってご乱心、連日訳のわからないLINEを送信しては翌朝陳謝という無限ループで、もう本当に自分が信用できなくなりました。
 そんなこんなで精神的にはどん底、正月ボケ明けから久しぶりに一人で稽古するとハマりが悪い。仕方ないので一般のトレーニング中心で流してお終い。
 で、次の日になると俄然、バキィッとハマっています。相変わらず、この法則性がわかりません。とにかく、後ろ回しで今までにない抜け感みたいのがわかったり、「うわ、めっちゃレベル上がってる!」と喜んだのですが、しばらく練習サボるとレベルが上がる現象というのはちょいちょいあるもので、しかもわかった途端にわからなくなるのが世の常、どうせしばらく経つと一旦またボケる、と自分のムラっ気にもすっかり慣れてしまっているワタクシ。
 それでようやく稽古に顔を出し、ここしばらくで掴んだことを徹底的に守るように練習。まあまあかな、というくらいには達成できました。
 すると稽古終わりに師匠がゆらりとやって来て一言。「おう、大分構えらしくなってきたじゃねぇか。正月稽古したか?」。いや、正直ゴロゴロしていただけで、ニヘラァと笑いながら「い、いえ、あんまり……グフフ」みたいな気持ち悪い笑い方をしていると、「正月稽古するヤツなんかいねぇんだ。ははは。まぁあとは、つま先と踵で移す感じ、あとちょっとバタバタしてるのがあるから、体重移動を丁寧に見直せ」とか、細々したところで注意を頂戴。ありがたく拝聴していましたが、正直ぴょんぴょん跳ねたいくらい嬉しかった!
 というのも、うちの師匠は人を褒めるということをほとんどしないのです。
 基本的に、悪いことしか言わない。そうでなければ、何が言いたいのかよくわからない一般的な注意。ポエムみたいなことを一言言って去っていくこともあります。
 最近は大分丸くなって、優しい調子で注意してくれることが多くなりましたが、とにかく鈍くさいヤツが嫌いな人なので、パッとできないとすぐにイライラしてきて「だからこうだろッ!」「何年やってんだッ!」「やめちまえ馬鹿野郎!」くらい余裕で飛んでくることがあります。だからもうわたしなんかは、ちょっと変わった稽古や苦手なことをする時は、師匠に見つからないように隅っこの方でこっそりやる訳です(皆んなその辺をわかっているので、センスのある先輩を先生のそばにおいておくように工夫したりして)。
 その師匠が満面の笑みでお褒めの言葉! ここで調子に乗って「でもムラっ気があって」とか余計なこと言うと光の速さで機嫌が悪くなるので、とにかく黙って「ハイ! ハイ! ありがとうございます!」とかメカみたいにこたえていました。

 わたしはセンスなんか全然ない。
 子どもの頃は暗い文化系で、ただただ本を読んでいるだけでしたし、走ったり跳んだりは普通程度、長距離はダメ、器械体操みたいなのだけは割と得意だったものの、球技はさっぱりダメ。ものを投げるのもダメ。チームプレイなんか全然できませんでした。人の気持ちがわからないクズですからね!
 格闘技の類を始めてからの歴では随分になりますが、ブランクもあるし流派も移っているし、今の師範のところでしっかり腰を落ち着けてからは十年もやっていません。そんなもの、この世界ではヒヨッコです。
 性格的にも才能的にも向いてないし、武術絡みで個人的に仲良くなれる人もいないし、単に負けず嫌いでやめ時を失ってズルズルやってきただけ。泣き虫だから、コテンパンにやられては一人でしくしく泣いたりものに当たり散らしたり、最低です。凝り性で研究好きだから一人で何時間も毎日練習したり、掛け持ちで色々勉強していたこともあったし、そういう成果を初見の某先生に見せて「おお! 君はそれをどこで学んだんだ!」と驚かれたことはありますが(自慢)、こんなことやっていても正直何の役にも立たないし、むっさいオッサンばっかで友達もできないし、全然モテないし、やめようと思ったことも何度もあります。というか、実際やめてブランクあいてコソコソ戻ったり、全然別の流派に移っちゃったりしていたわけですし。
 今だって毎月のように、というか毎週のように「もうやめよう」「こんなことやって何になるの」と思ってるし、雰囲気も肌に合わないし、痛い思いをすることもあるし、骨折だけで何箇所もやってるし、失明の危機にもあったし、大体体格差性差が絶対の世界なのにどうしてこんな不利なことやってるのか、まったくもってバカバカしいとしか思えません。
 それでも、自分の身体の中に確かなものはあるし、調子が良い時のバチィッ!とハマった感じがなにものにも変え難く、それが確かな筈なのに人を相手にするとなかなかうまくいかない、一人でもムラっ気が酷くて思うようにならない、それが悔しくてやめるにやめれず、ちょっと心を逃して「いいよあたしゃ、健康法で」「筋トレでもするわ~」「ヨガでもやろうかな~」とか言いつつまた戻ったり、そんなの繰り返し。
 大体、武術なんて人に見せるものではないし、今は競技志向でもないし今更試合に出る気もないし、誰も褒めてくれないし、構ってちゃんで目立ちたがりのわたしが向いている訳がない。本当は最初からお芝居とかダンスがやりたかった。単にチャンスがなくてできなかっただけで。それで武術で作ったものを自分なりに活かして人に見せるダンス的なものに応用してみたり、デモンストレーション的なものをやってみたり、そんなことで心を逃しもしているのです。
 表現は良いですよ、表現は。人に喜んで貰えることもあるし、たまには褒めてもらえるし、それがなくても人を傷つけはしないでしょ? なんなの武術って。バカじゃないの。
 もうただひたすら、刀を研いでるだけ。時代錯誤もはなはだしい。クソムサイおっさん向けよ、こんなの。あと武術やってる男とか99%無神経で暗いし話合わない! 大嫌い!

 なんだけど、やっぱたまに褒められると嬉しいなぁ! それがこの、どん底の精神状態だったので、ああやめないで良かった、やってれば何か見つかることもある、と救われた気分になりました。騙されてる?
 なんでしょうね、これ。
 精神状態が最悪の時に限って身体が動くって現象、わたしは時々あるんですけどね。今日戦って死ねということですかね。死にたくないよぅ。
 まぁいいや。
 どうせ来週くらいになったらまた絶不調で、「全然つながらない」とかイライラしてるところに師匠が来てボロクソに言われ「そんなの言われないでもわかってる! わたしだって一所懸命やってるのよ!」と言いたいところをうつむいて「ウス…」とか言ってるだけの悲惨な状況になるのが目に見えているけれど、今日のところは許す! もう知らん!
 まぁ最近は他のことともバランスをとるよう考えているので、例によって半分逃げ腰になりながら、細々やるのでしょう。
 損やなぁ、もう。

よしこ画伯

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よしこ画伯

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